メンヘラホステスの戯言

うつになって会社を辞めて、私はホステスになった

死のうと思って出社して帰された。

 

ゴキゲンヨウ、メンヘラホステスです。

昨日は私が出社拒否をかましあそばせたお話をした。今日はその翌日の話をしようと思う。

8月のある日、私は出社拒否をした。 - メンヘラホステスの戯言

 

 

 

さて、私は出社拒否をかましたのにもかかわらず、まだ会社を辞めるか決めかねていた。正確に言うと、辞めたいという自分の気持ちは至極はっきりとしていたのだが、だからと言って本当に辞めてしまうのか、それともしばらく休職するのか、これからの身の振りようを決めかねていた。

出社拒否の翌朝も心臓はバクバク言い続けていたし、喉元にはずっと何かがつっかえているような感覚があった。お腹も壊していて、ものを入れたそばから下した。

 

 

3日連続で休んでいたのだから、さすがにもう1日休むのならば会社側にも事情を説明するしかなかろう、と私は堪忍していた。

 

出社拒否の翌日、私には2つの選択肢があった。

  1. 事情を説明して退職もしくは休職する。
  2. 何事もなかったかのように仕事に行き、それ以降も普通に働く。

 

1つめの選択肢には準備が必要だった。会社側に自分の状態をわかってもらうには、私の状況を、第三者の人が冷静に客観的に診たという証拠が必要だと思われた。「これ以上頑張れない」というのは「甘え」と紙一重だからだ。

 

本当のことをいうと、自分でも「病気」なのか「甘え」なのかわからなかった。

 

ただ、病院で何かしらの病名を言い渡されてしまうと、「困難にも負けずに頑張る」という私が人生で唯一誇ってきた気高い意志を、私は、自分の中から永遠に葬り去ってしまうのではないか、という恐怖を感じていた。

困難にぶつかるたびに病気を言い訳にして、「逃げる」という選択肢しか手元にない弱小人間になるなんてゴメンだ。私にはなんでもできるはずなんだ。なんでも・・・

 

そんな葛藤があったから、私は心療内科や精神科を受診しに行こうという気になかなかなれなかった。

 

 

 

そうなれば残す選択肢は一つ。

「何事もなかったかのように仕事に行き、それ以降も普通に働く。」

 

 

実際、少し落ち着いた頃には、「明日はいけるかもしれない。行ってみたら何事もなかったかのように働けるかもしれない!」と思えた。いや、無理にそう言い聞かせて自分を奮い立たせていたのかもしれない。相変わらず、喉や腹部に違和感はあったという記憶がその証拠だ。

 

 

はたして、わたしは出社した。

 

 

割とネガティブな意志を伴う出社だった。

体調は頗る悪かったし、選択肢1を選ぶ心の準備ができていなかったから、もう出社するしかなかった。おお、なんとひもじい選択肢よ。

 

わたしは実家に住んでいたので、会社に行くまでの所要は1時間半ほど。

電車を二本乗り継いで、最寄駅から更に自転車で15分くらい走ったところにオフィスはあった。

結構遠かったけれど、わたしは毎朝7時半頃に出社するようにしていた。

朝早く出社する利点は、仕事を早く始められるということと、オフィスでみんなを待ち伏せできるということだ。

誤解を招かぬよう説明しておくと、わたしが働いていた会社はバリバリのベンチャー企業で、めちゃくちゃ忙しかった。どれくらい忙しかったかというと、排泄や昼食の時間が取れないことがザラにあるほど、忙しかった。だから、残業を減らすためにも、朝早く出社して少しでも早く仕事を終わらせたかった。オフィスでみんなを待ち伏せたかったのは、わたしがとんでもなく小心者だからである。だって、扉を開けたら人がいっぱいいるって緊張するじゃない。

あれ。今考えるとわたしって結構メンヘラの素質あるわね。

 

そんなわけで、「死にたい」と繰り返し繰り返し頭の中で唱えながらも、わたしはなんとか2本の電車を乗り継いで7時半頃には会社の最寄駅についていた。

しかし、最寄駅について、わたしは腹部を激痛に見舞われて動けなくなった。しばらくベンチに座り込んで休憩し、気が付いたらあっという間に9時前になっていた。シャカシャカと自転車を漕ぎ、意を決してオフィスに入ると、連日休んだわたしを心配して同僚がパタパタと駆け寄ってきた。

でも、あれ。

いつものようにうまく笑えない。

顔の筋肉がうまく動かない。

だんだん涙ぐんでくる。

心臓がバクバクなっている。

帰りたい、帰りたい、帰りたい。

 

思わずトイレに駆け込んで、わたしは暫く自分を落ちつけることにした。お腹にはもう何もはいっていないはずなのに、ギュルギュル鳴ってうるさかった。

20分くらい個室にこもっていただろうか、トイレに誰かがやってきて乱暴にドアを閉めた。そして個室の壁越しに「顔色悪いから帰りなさい」と言った。先輩社員だった。わたしが黙っていると、「仕事は大丈夫だから。」と言って出て行った。

 

トイレからわたしが出ると、顔色が悪いわよと、何人かが駆け寄ってきてくれた。しかし、彼女らは二言目には顔をニヤつかせて「ねえ、もしかしてオメデタなんじゃないの?」と嬉しそうにきゃあきゃあ言うので、わたしも拍子抜けして思わず笑ってしまった。

相変わらずわたしの顔色は悪いままなので、わたしはどうしても済ませなくてはならない仕事を終わらせ、お昼に帰らせてもらうことにした。刺すような腹部の痛みはなくなる気配もなく、帰るまでわたしをデスクで苦しめていた。

 

 

その日の職場での体調があまりにも悪かったので、ついにわたしは病院に行くことを決心した。もはやこの体調の悪さが精神とは全く関係ないところで起こっているとは、どうしても考えられなかった。なぜなら、わたしは妊娠などしているハズがなかったから。

 

 

 

わたしはフラフラと会社を後にして、街に出た。